2020.12.19ブログ
第16回 小麦(成分、健康被害、グルテン)
小麦はパンやうどんをはじめ、多くの食品に含まれています。しかし小麦は、食品の中でも農薬量が多く使用されていたり、乳製品同様にアレルギーがあったりと問題も多いです。
現在流通している小麦の品種は、人類が古くから栽培していた野生の品種(ヒトツブコムギやフタツブコムギ)ではなく、遺伝子組み換えされ品種改良が行われた、人工的な小麦(パンコムギなど)がほとんど。
収穫量の増加、病気や日照り、高温に耐えられるよう改良された小麦は、大量生産に向いている一方で身体対する様々な悪影響が指摘されています。
【1】含有成分
1)炭水化物
小麦の成分の約67~75%が炭水化物です。内訳としては、75%がブドウ糖の分子が枝分かれして繋がった、アミロペクチンA。残りの25%が、直鎖状に繋がったアミロースです。アミロペクチンAはアミラーゼによって消化されますが、アミロースの一部は消化されないまま結腸にたどり着きます。
(1)アミロペクチンAと肥満
でんぷん質であるアミロペクチンAは、消化スピードが異常に早く、普通のでんぷんより血糖値を急上昇させます。つまり、インスリンの分泌が急激に増え、血糖値が低下するのです。
この数値変動は、LDLコレステロールを上昇させて動脈硬化の原因になるとされています。
血糖値の急上昇、低下を繰り返すと、インスリンに対して抵抗性が生まれ、インスリンの効力が落ちます。すると、血液中に増加した糖は脂肪として蓄積。これが、「小麦を食べ過ぎると太る」と言われる所以です。
小麦の摂取は、血糖値の急上昇による「ハイ状態」と、その後の急降下による「ロー状態」を2時間ごとに繰り返します。この間は満腹状態と空腹状態が急激に入れ替わり、空腹時には倦怠感・震えといった低血糖特有の症状が表れることも。
ただグルテンと異なり、ライ麦や大麦にはアミロペクチンAは含まれません。アミロペクチンAは単純糖質よりも非常に効率よく吸収され、砂糖よりも血糖値をあげます。
(2)アミロペクチンB、アミロペクチンC
アミロペクチンBは、じゃがいもやバナナなどに含まれ、アミロペクチンAと同様に血糖値を急上昇させます。
アミロペクチンCは豆類に含まれており、胃や小腸でほとんど吸収されず、大腸へと到達し、悪玉菌の餌となりおならの成分になってしまいます。
(3)AGEと老化
高血糖状態が続くと、終末糖化産物(AGE)を作り人体の老化を促進します。全粒粉パンは健康に良さそうですが、実は砂糖以上に血糖値を上げるのです。
全粒粉パンを2枚食べると、砂糖の入った炭酸飲料を1缶飲むことに相当するか、それよりも血糖値上昇はひどいです。
AGEは、たんぱく質と糖が結合(糖化)し合成することでできます。AGEはしわやたるみ、白内障、認知症の原因になり、大きく2種類に分けられます。
1.外因性
食べ物自体に含有されるAGEで、肉やチーズに多く含まれます。これらを直火焼き・揚げ物などで加熱すると、AGEの量が約1,000倍になると言われています。ベーコンやソーセージの加工過程でもAGEが増加します。
2.内因性
体内で合成されるAGEです。急上昇した血糖状態で、糖が体内のコラーゲンやエラスチンなどのたんぱく質と結合して合成されます。
AGEは一度生成されると2度と代謝されず、体内の様々な部位で蓄積されます。
2)たんぱく質
小麦粉中には様々な特性を持つたんぱく質が混在していますが、その約85%はグリアジンとグルテニンです。両社はほぼ同量存在し、小麦粉に水を加えて捏ねることで、グリアジンとグルテニンが絡み合ってグルテンが形成されます。
グルテニンは抗張力が強く弾力性があり、グリアジンは軟らかく粘着性があります。
グルテンは小麦、大麦、ライ麦などの穀物から生成される、たんぱく質の一種です。パンやうどんのもちもち感、コシなどを生み出します。
グルテンはアメリカにおいて強い中毒性であるとして問題視されてきました。最近はグルテンを除去した「グルテンフリー」の食材・飲料がスーパーでも並ぶようになり、日本でも注目されています。
グルテンやω5グリアジンはアレルギー物質としても知られ、にきびや吹き出物の原因となります。
(1)グリアジンのもたらす「食欲異常増進」
グリアジンは、ヘロインと同様の中毒性があると化学的に実証され、非常に危険性があります。
グルテンは体内に入ると、ペプシンと胃酸によって分解されてポリペプチド混合物になります。ポリペプチド混合物は、血液と脳を隔てる血液脳関門を通過できます。
脳内に侵入したポリペプチド混合物は、モルヒネ受容体と結びつき、エクソルフィンに。危険なドラッグを摂取したときと、全く同じ状態を作り出してしまうのです。
エクソルフィンには、幸せホルモンのセロトニンと同様の効果があります。エクソルフィンは摂食中枢を刺激し、脳は再び小麦を欲するようになるのです。エクソルフィンによって、小麦抜きの食生活より1日約400kcal分も多く食べてしまうという研究結果が報告されているほどです。
エクソルフィンの影響は、神経伝達にも及びます。実際に神経伝達異常によって、うつ病、統合失調症などの精神疾患の原因になります。
(2)グルテンとセリアック病
グルテンに対して、消化器系が過剰反応してしまう「セリアック病」という症状があります。
セリアック病は小麦、ライ麦などに含まれる、グルテンに対する免疫異常で起こる自己免疫疾患です。具体的には、小腸の粘膜が炎症を起こし、栄養の吸収を阻止されます。次のような症状がおこり、悪化すると死に至ることもあるのです。
下痢、腹部膨満感、過敏性腸症候群、潰瘍、腸癌、貧血、疲労感、骨や関節の痛み
日本でのセリアック病罹患率は、約0.7%。アメリカ、イギリスでは約1%。非常に少なく見えますが、これは20世紀中盤と比べると4~5倍の数字です。
セリアック病の症例が急増している昨今、食品会社の多くがグルテンフリー食品を増やしています。一方多くの医師は、セリアック病でなければ、グルテンフリーになる意味はないとも考えているようです。
Academy of Nutrition and Dieteticsの記事では「消費者がグルテンフリー食品を購入する一番の理由は『健康的』であるからだが、セリアック病ではない人々に対しても、健康促進効果がある証明する研究発表はない。むしろ、グルテン自体に含まれる成分には、健康に有益な栄養もあり、グルテン回避が必ずしも正しいと認められるないこともある」と触れています。
心臓学者のアーサー・アガストン医師は、多くのグルテンフリー食品はジャンクフードと同程度、飽和脂肪酸や砂糖、ナトリウムが含まれると指摘。白米、片栗粉と同様に血糖値への悪影響があり、中毒性も懸念されると注意を促しています。
ある研究では、グルテンフリー食の継続は鉄分、葉酸、ビタミンB1、カルシウム、ビタミンB12及び亜鉛の欠乏を引き起こす場合があるという報告もあります。
1)農薬
米国から輸入される小麦からは、神経毒性のある数種類の殺虫剤が検出されることが多いです。
農薬として使用される有機リン系殺虫剤のマラソン、スミチオン、レルダンなどは、神経伝達を阻害して虫を殺します。この効果は、人に対しても同じく働くので無視できません。
実際に、輸入小麦から作った食品を摂取することで、頭痛、めまい、倦怠感、下痢、腹痛、嘔吐、視力減衰、免疫低下なども報告されています。
実は先進国で、小麦の大部分を輸入に頼っているのは日本と韓国のみです。皮肉なことに、アメリカでは国内消費される農作物に対して、これらの農薬の使用は禁止されています。日本への輸出品のように、長距離輸送における虫害を考慮しなくていいからです。
オーストラリアでは、全ての小麦に殺虫剤を使用してきましたが、近年それを減らしています。
ちなみにカナダ産では、こうした残留農薬が輸入小麦でもほとんど検出されません。カナダは寒冷な北方経由で運搬し、北海道で荷揚げされるので農薬の必要性が少ないからだと考えられます。
農薬の問題は、すぐに身体に問題が起こるわけではありません。しかし長年の蓄積が、身体にどう影響するかは考える必要があるでしょう。普段の食生活では「麺は蕎麦」「パンはご飯、白米よりも玄米」などにして、ラーメン、ビールなどの頻度を少なくする。このように、食生活を見直してみてください。
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