2021.02.27ブログ
第25回 消化器系の消化・吸収メカニズム
多くの食物は、そのままでは体内で利用できない高分子の形で摂取されます。これらを分解して、消化管の粘膜を通過しやすい低分子にする過程を消化といいます。消化により分解された栄養素が、血液やリンパ液へ移送される過程を吸収といい、吸収の約90%は小腸で行われます。
消化器系
食事をすると食物は、次のルートをたどって体外へ排便されます。
口腔→咽頭→食道→胃→小腸(十二指腸、空腸、回腸)→大腸(盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸)→肛門
消化器系は、口腔から肛門まで続く消化管と、分泌活動を行う唾液腺、肝臓、胆嚢、膵臓の副器官から形成されます。
消化の種類
消化には、物理的に細かく砕いていくという機械的消化(物理的消化)と、酵素による分子量を小さくするという化学的消化の2種類があります。
1)機械的消化(物理的消化)
口整内での咀嚼、胃や腸での蠕動運動や分節運動などで行われる消化のことです。咀嚼によって食物が組かく砕かれ食塊となり、消化液の作用する表面を増加させます。その後蠕動運動や分節運動によって、食塊と消化液が混和・撹拌されます。
2)化学的消化
消化液中の消化酵素による加水分解、酸による分解、アルカリによる中和、胆汁による乳化などの消化です。体内では、1日に約7〜8Lの消化液が分泌されます。化学的消化はさらに管腔内消化、膜消化、生物学的消化に分けられます。
(1)管腔内消化
管腔内に分泌した唾液、胃液、膵液、胆汁、腸液などの消化液によって行われる、中間的な消化です。
(2)膜消化
小腸の粘膜細胞(吸収上皮細胞)の微絨毛膜表面に存在する、消化酵素によって行われる最終的な消化です。
(3)生物学的消化
大腸での腸内細菌による発酵を伴う消化。大腸に到達するまでに消化されなかった物質が、生物学的消化によって消化されます。
消化の過程
各器官によって、消化運動や消化酵素の種類は異なります。
口腔
口腔では咀嚼による機械的消化と唾液による化学的消化が行われます。
1)食塊の移送
食物は口控内で咀嚼によって噛み砕かれ、咽頭、食道を経て胃へ嚥下されます。
2)唾液
主な唾液腺には、※耳下腺・舌下腺・顎下線の3種類あります。
1日の唾液分泌量は約1〜1.5Lで、液性はほぼ中性(pH6〜7)です。昼は持続的に分泌され、睡眠中に分泌が止まります。唾液の99.5%は水分であり、この水分とムチン(粘液たんぱく質の総称)が、食塊の嚥下しやすくしています。
唾液腺の特徴
・耳下腺
漿液性のさらさらした唾液を分泌。水、電解質、α-アミラーゼが豊富。α-アミラーゼはデンプンの一部を、デキストリン、マルトースなどに分解する。
・舌下腺
粘液性の唾液を分泌する。ムチンが豊富。
・顎下腺
漿液性と粘液性の混合した唾液を分泌する。
胃
1)機能
食道から送り込まれた食塊は、胃の蠕動運動で噴門、幽門へと運ばれます。胃液と混ざり、半流動状の消化粥になった食塊は、十二指腸へ移送されます。胃の滞留時間は一般に、糖質、たんぱく質、脂質の順に長いです。
2)胃液
胃液は、胃底腺の主細胞・壁細胞・副細胞から分泌されます。1日の胃液分泌量は約1〜2Lで、液性は強酸性(pH1〜2)です。
胃液の分泌は、たんぱく質、適量のアルコール、カフェイン、慢性的ストレスなどで促進され、脂肪で抑制されます。
胃液の分泌の種類
・主細胞
ペプシン(たんぱく質の一部をポリペプチドに分解)の前駆体であるペプシノーゲンを分泌。塩酸によって活性のあるペプシンになる。
・壁細胞
塩酸(胃酸、強い殺菌作用がある)を分泌。回腸でビタミンB12を吸収するのに必要な内因子(キャッスル因子)も分泌する。
・副細胞
ムチンを主成分とする粘液を分泌。胃粘膜を保護し、ペプシンが胃粘膜を消化するのを防ぐ。
小腸
消化粥は十二指腸に移送された後、分節運動・振子運動・蠕動運動の3運動で膵液・胆汁・腸液それぞれと混和・撹拌。そして空腸を経て、回腸へ運ばれます。食後約4時間が経過後、回腸未端で強い蠕動運動が起こり、腸で消化されなかった内容物が上行結腸へ移送されていきます。
同様に、平滑筋層によって蠕動運動・分節運動も起きます。
消化管壁
粘膜、粘膜下層、輪状筋や縦走筋などの平滑筋層、漿膜で形成されます。最内層の粘膜には、消化液と粘液を分泌する腺があります。小腸粘膜には多数のひだと突起した絨毛があり、絨毛の表面にも多数の微絨毛が存在。これにより、栄養素の吸収表面積を増大させます。
膵液
膵液は膵臓で作られ、膵管、総胆管を経て十二指腸に分泌されます。1日の膵液分泌量は約1〜2Lで、液性は弱アルカリ性(pH7〜8)です。膵液中の炭酸水素イオン(HCO3-)は、胃から移送された酸性の消化粥を中和。消化酵素が作用しやすい条件を作ります。
膵液には糖質、脂質、たんぱく質を分解する複数種類の酵素が含まれ、管腔内消化の中心的な役割を担います。膵液に含まれるたんぱく質の消化酵素は、全て不活性型のプロ酵素として分泌。膵管の内腔における自己消化を防ぐため、膵液中にはトリプシン阻害因子が含まれています。
膵臓は膵液を分泌する外分泌腺であると同時に、インスリンなどのホルモンを分泌する内分泌腺でもあります。
胆汁
胆汁は肝臓で作られます。食間期には濃縮されて胆嚢に貯えられ、消化に際して胆嚢が収縮して十二指腸に分泌されます。1日の胆汁分泌量は0.6〜1Lで液性は弱アルカリ性(pH7〜8)です。
胆汁は消化酵素を含みません。しかし主成分の胆汁酸が持つ強力な界面活性作用が、脂質や脂溶性ビタミンを乳化して膵液中の酵素消化を助けます。胆汁は膵液と同様、胃から移送される酸性の消化粥を中和します。
小腸内に分泌された胆汁酸の大部分は回腸で吸収され、門脈を経て再び肝臓に戻リます(腸肝循環)。
一次胆汁と二次胆汁
肝臓で合成された、胆汁中に分泌される胆汁酸(フール酸、ケノデオキシオール酸)を一次胆汁酸といいます。
また、一次胆汁酸が腸内細菌(悪玉菌)によって脱抱合化・脱水酸化を受けて生成される胆汁酸(デオキシコール酸、リトコール酸)を、二次胆汁酸といいます。
二次胆汁酸には発がん作用があることが知られます。動物性脂肪を多く摂取すると、一次胆汁酸が多く分泌。すると多くの二次胆汁酸が生成されて、大腸がんなどの発症リスクが高まります。
腸液
腸液は十二指腸腺(ブルンネル腺)及び腸腺(リーベルキューン腺)から分秘されます。ブルンネル腺はムチンを主成分とする、アルカリ性(pH8〜9)の濃厚な粘液を分泌。酸性の胃内容物を中和し、腸粘膜を保護します。
小腸粘膜微絨毛膜には消化酵素が多いものの、腸液には消化酵素は含まれていません。
膜消化
小腸粘膜微絨毛膜に存在する消化酵素のマルターゼ、アミノペプチダーゼなどが、二糖類やオリゴペプチドを単糖類やアミノ酸、ジペプチド、トリベプチドへ分解されます。
これを膜消化といい、栄養素は膜消化されると同時に吸収上皮細胞内に取り込まれ吸収されます。
大腸
1)発酵
大腸到達までに消化されなかった難消化性糖質(食物繊維、糖アルコール、難消化性オリゴ糖など)は、腸内細菌によって嫌気的発酵を受けて、短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)を生成します。
短鎖脂肪酸は大腸で吸収されて、約2kcal/gのエネルギーとして利用されます。短鎖脂肪酸は腸内環境を弱酸性に保ち、悪王菌や病原菌の増殖を抑制。またミネラルの吸収を促進します。
一方で、難消化性糖質を腸内細菌の資化(栄養源として利用すること)以上に大量摂取すると、大腸内の浸透圧が高くなり下痢を誘発します。
2)大腸の運動
上行結腸に移送された内容物は、分節運動と蠕動運動により撹拌。横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸の順に移送されます。直腸に内容物が移送されると排便反射が発声。腸内細菌に利用されない未消化物が、糞便として肛門から体外へ排泄されます。
なお、糞便の乾燥重量の約1/3〜1/2は腸内細菌です。
管腔内消化のバランス調節
消化液の分泌と消化器の運動は、自律神経系とペプチドホルモンである消化管ホルモンによりコントロールされます。
1)自律神経系
消化管は一般に、副交感神経によって活動が亢進し、交感神経によって抑制されます。
2)消化管ホルモン
消化管ホルモンは、胃・小腸などの消化管粘膜内にある、内分泌細胞によって産生されて消化液の分泌・消化管運動を調節します。
膜消化・吸収
1)部位別の吸収
栄養素と水の吸収の約90%は小腸で行われ、残りの10%は胃・大腸で行われます。小腸での吸収は、小腸粘膜の吸収上皮細胞で、膜消化と同時進行。小腸の中で吸収の最も盛んな部位は空腸です。
胃の上皮細胞は、ほとんどの物質を透過しません。胃は微量の栄養素・水のほか、アルコールや単糖類などの一部を吸収します。大腸は水や電解質を吸収する重要な器官であり、他にも短鎖脂肪酸やアミノ酸、腸内細菌の合成するビタミン類なども吸収します。
2)小腸での吸収機構
消化された栄養素が血管やリンパ管を通じて全身に供給されるには、小腸吸収上皮細胞を通過する必要があります。栄養素は微絨毛膜の透過細胞内の移動、側底膜の透過の過程を経て血管やリンパ管に移行する栄養素が微繊毛膜あるいは側底膜を透過する機構には、濃度勾配に従う受動輸送と、濃度勾配に逆らう能動輸送があります。
(1)受動輸送
輸送担体を必要としない単純拡散、輸送担体を必要とする促進拡散の2種類あります。
・単純拡散
細胞膜を隔てた、細胞内外の濃度勾配に従い、濃度の高い側から低い側へ物質が輸送される。濃度勾配に比例して、輸送速度が大きくなる。エネルギーは不要。
・促進拡散
濃度勾配に従って濃度の高い側から低い側に物質が移行するが、輸送担体を介して輸送する点が単純核酸と異なる。単純拡散よりも輸送速度が速いが、輸送担体を介するので輸送時に飽和現象が見られる。エネルギーは不要。
(2)能動輸送
受動輸送とは逆で、濃度の低い側から高い側へ、エネルギーを利用して濃度勾配に逆らい物質が輸送されます。輸送担体を介して輸送され、エネルギー利用の違いから一次性能動輸送、二次性能動輸送、三次性能動輸送に分けられます。
・ 一次性能動輸送
ATPの加水分解エネルギーを直接利用する。
(例)「Na+/K+-ATPase(ナトリウムポンプ)」
細胞内から細胞外へNa+を汲み出す
二次性能動輸送
一次性能動輸送で生じた、イオン濃度勾配を利用する。
(例)「Na+/D-グルコース共輸送担体(SGLT1)」
Na+の濃度勾配を利用して細胞外のグルコースを細胞内へ輸送する。
・三次性能動輸送
二次性能動輸送で生じたイオン濃度勾配を利用する。
(例)「H+/ジベプチド共輸送担体」
H+の濃度勾配を利用して細胞外のジペプチドを細胞内へ輸送する。
栄養素の体内動態
栄養素が水溶性であるか脂溶性であるかによって、小腸から吸収された栄養素が体内の各組織に運搬される経路は異なります。
(1)門脈系:水溶性栄養素
単糖類、アミノ酸、水溶性ビタミン、無機質、短鎖・中鎖脂肪酸、グリセロールなどの水溶性栄養素の経路です。
毛細血管→門脈→肝臓→心臓→全身へと運搬されます。
(2)リンパ系:脂溶性栄養素
モノアシルグリセロール・長鎖脂肪酸・コレステロール・脂溶性ビタミンなどの脂溶性栄養素の経路です。
胆汁酸塩とともにミセルを形成し、小腸吸収上皮細胞へ運ばれます。微絨毛膜の表面に達するとミセルは壊れ、ミセルに溶解していた脂溶性栄養素が細胞内に入ります。
そして、細胞内でカイロミクロン(キロミクロン)を合成し、乳び管→リンパ管→胸管→心臓→全身へと運搬されます。
脳相・胃相・腸相
1)脳相
・食物を見る
・匂いを嗅ぐ
・料理を味わう
こうした行動があると、延髄を介して副交感神経(迷走神経)が刺激を受け、胃液の分泌を促します。これを脳相といい、胃液分泌全体の45%に関わります。
2)胃相
胃に食塊が入ると、機械的刺激・化学的刺激によって消化管ホルモンであるガストリンが分泌。それにより胃液の分泌を促される一連の流れを、胃相といいます。
3)腸相
十二指腸に胃内容物が入ると、コレシストキニン(CCK)、セクレチンといった消化管ホルモンが分泌し、それが膵液と胆汁の分泌を促進します。
セクレチンはネガティブフィードバック作用を持つため、胃酸とガストリンの分泌を抑制。コレシストキニンは、胃内容物が十二指腸へ過度に送られないよう胃の運動を抑制します。
この一連の反応を腸相といいます。
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