2021.04.10ブログ
第31回 腸内環境を悪化させる食品添加物
私達の腸内には、約3万種類、100〜1,000兆個の細菌が生息し、その重量は1.5kg〜2kgになると言われている。常在細菌である腸内細菌は、日々の生活習慣、食事などで日和見菌が悪玉・善玉どちらかに偏り、腸内環境のバランスを変化させる。
1)腸内細菌の働き
1.病原体の侵入予防と排除
2.食物繊維を消化し、短鎖脂肪酸を産生する
3.ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンK、葉酸、パントテン酸、ビオチンなどビタミン類の生成
4.ドーパミンやセロトニンの合成
5.免疫力の保全(腸内細菌、腸粘膜細胞で免疫力の約70%を作り出すと言われている)
2)腸内環境を悪化させる添加物
なかでも次の5種類の添加物は、腸内環境を悪化させる危険性が高いため注意が必要である。
(1)乳化剤
アイスクリームや多くの食品に乳化剤として添加されているカルボキシルメチルロースとポリソルベート80は、腸内細菌叢を変化させ、慢性的な炎症を誘発。代謝異常を引き起こす危険がある。これらを与えたマウスは、乳化剤を与えないマウスと比較して腸の粘膜の透過性が高まり、炎症が進行したという研究がある。
これ以外に、ポリソルベート80摂取でM細胞を通過する大腸菌が増加したという報告もある。20世紀半ば以降で、炎症性腸疾患患者数が増えている要因の1つが、多くの加工食品で使用されている乳化剤だとされている。
(2)人工甘味料
スクラロースを摂取させたラットやマウスの実験では、有益な腸内細菌が約50%減少、腸内細菌叢の変化に伴う炎症悪化といった変化が報告された。またアスパルテームは、腸内細菌叢に悪影響を及ぼし、インスリン抵抗性を誘発しやすい(肥満の原因になる)という。
アスパルテーム、スクラロースサッカリンといった人工甘味料の粉末を大腸菌株に曝した結果、成長・繁殖が抑制されたという研究もあり、腸内細菌に強い毒性とストレス効果があることが知られる。
(3)トランスグルタミナーゼ
トランスグルタミナーゼは、主に蛋白質と蛋白質をつなぎ合わせる(架橋する)活性を持つ酵素の1つである。食品改質剤として、かまぼこ水産加工品のゲル化、ソーセージなどの加工肉ゲル化など、パン小麦の加工品食品業界で広く普及している。
パンなど小麦に含まれるグルテンは、腸内でグリアジンに分解。その際体内にトランスグルタミナーゼがある場合、粘着性の高いグリアジンと架橋させる。免疫はこれを異物と誤解し攻撃するが、腸にもダメージがあり自己免疫疾患が起きやすくなる。特にセリアック病の要因として、トランスグルタミナーゼは問題視されている。
(4)保存料
保存料は抗菌作用があり、食品の長期保存に役立つ。しかし長期間にわたる保存料の継続的摂取は、腸内細菌叢の組成と機能を変化させ、免疫低下に陥る危険があるとされる。
例えば保存料ソルビン酸カリウムは、特定の腸内細菌に曝すと成長・増殖阻害を引き起こす。他にもポリリジンはマウスの実験で、腸内細菌叢に変化を起こしたと報告されている。
安息香酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムの摂取も同様に、マウスの腸内細菌叢の細菌数の減少に影響したという研究がある。
(5)亜硫酸塩
亜硫酸塩は保存料、防腐剤として用いられる。しかしその摂取量が増えると、ビフィズス菌減少をもたらすとされている。他にも亜硫酸塩は、ラクトバチルスのカゼイ、プランタルム、ラムノサス、ストレプトコッカス・サーモフィラスといった、腸内の善玉菌を大幅に減少させると報告されている。
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