2021.08.14ブログ
第48回 アスリートと糖質摂取の関係
アスリートにとって、糖質=グリコーゲンは高強度の運動における必要不可欠なエネルギー源である。試合前後における糖質の摂取や糖質制限は、試合のパフォーマンスを左右するとさえ言える、非常に重要なポイントです。
(1)糖質と疲労の関係
1)中・高強度運動での糖質
人体は一定強度の運動をすると、血液中の乳酸レベルが急激に高まる。この運動強度を「乳酸性作業閾値(LT:Lactate Threshold)」と呼ぶ。LTは、最大酸素摂取量の55~65%、つまり55~65%VO2maxであると言われる(50~70%VO2maxとする文献・資料もある)。一般成人の場合、LTはジョギングに相当する。
筋肉は遅筋線維、速筋線維の2種類存在するが、LT未満の低強度の場合、ミトコンドリアが多く含まれる遅筋繊維が主に働くため、体脂肪由来の脂肪酸をエネルギーとして活用しやすい。一方で、速筋線維はミトコンドリアが少ない代わりに、グルコース、グリコーゲンを分解する酵素が多く、糖質を分解しスピーディにエネルギーを生産できる。
また、脂質の代謝経路は複雑であり、筋グリコーゲンの方がATPを素早く再合成できる。そのため、運動強度がLT以上へ高まるに連れ、脂肪酸よりも筋グリコーゲン由来のエネルギーの生産量が多くなる。
2)筋グリコーゲンと肝グリコーゲン
一般的な人体の体脂肪貯蔵量は、エネルギーに換算すると約80,000kcalと非常に多い。一方で、骨格筋の筋グリコーゲン貯蔵量の平均は約1,600kcalと限りがある。65~80%VO2maxを60〜90分続けると、筋グリコーゲンは枯渇し「筋疲労」を覚える。
一定強度の運動を長時間持続すると、筋グリコーゲンの減少に合わせて、脂質の利用が増えてくる。ATPの再合成において、糖質よりも脂質のほうが必要な酸素量が多い。そのため、一定強度の運動を持続すると、酸素消費量もそれに合わせて増えてくる。
フルマラソンを2時間10分前後で走るランナーや、サッカー、バスケットボール等の運動量が多いスポーツの平均運動強度は、70~80%VO2maxと言われる。それだけの運動強度を長時間続けるため、筋グリコーゲンの枯渇と脂質利用の割合増加に伴い、酸素の運搬・消費機能への負担も非常に大きいだろう。結果、これらへの過負荷に伴う疲労が生じ、呼吸があらくなったりきつさが増したりする可能性も考えられる。
運動中は、血液中の糖質(血糖)も活発に消費される。それに対して、グリコーゲンの貯蔵庫である肝臓は、血糖値を一定に保つため肝グリコーゲンを放出。しかし、肝グリコーゲンは約400kcalと筋グリコーゲンよりも少ない。放出量に対して血糖の消費量が多いと、血糖値は低下、すると脳のエネルギー不足による「中枢性疲労」へとつながり、筋疲労の原因ともなる。
(2)トレーニング期
1)アメリカ、カナダが示すガイドライン
アメリカスポーツ医学会、カナダ栄養士会は、スポーツ選手が1日に摂取すべき糖質量の目安を公式声明として出している。それによると、必要な糖質量は次の通りだ。ただし、海外のトップアスリートでも上記ガイドラインよりも多い量(少ない量)の糖質でトレーニング事例も多数存在する。あくまで目安として、個々の選手に応じた
・運動時間が1日約1時間の場合:1日あたり5~7g/kg
・運動時間が1日約1~3時間の場合:1日あたり6~10g/kg
・運動時間が1日約4~5時間以上の場合:1日あたり8~12g/kg
この他、糖質摂取にフォーカスしたガイドラインとして、次のようなポイントも上げられる。
●運動の休息時間が8時間未満のとき
休息時間に可能な限り筋グリコーゲンを回復させるため、運動終了後すぐに糖質を補給する。
●比較的長時間(24時間)における筋グリコーゲンの回復の場合
選手にとって現実的+快適な方法で、糖質量の多い食事・食品を摂る。
●グリセミック・インデックスが高~中等度の食品
筋グリコーゲン合成に利用すやすい。
2)アスリートのトレーニングと糖質制限
トレーニングにおいて、十分なエネルギー補給=糖質摂取が必要不可欠であるという意見は一般的だが、一方で糖質制限等により、筋グリコーゲンを意図的に減らしてトレーニングを行うこともある。伝統的な手法としては、早朝トレーニングで筋グリコーゲンが減少した状態で、午後にトレーニングをするというものだ。
この手法は「train low」と呼ばれるが、糖質制限でも同じ状況を生み出せる。筋グリコーゲンが少ないなかでの運動は、運動効果を高めるシグナル酵素、AMP依存性プロテインキナーゼの活性が高まりやすい。これにより、ミトコンドリアならびに脂質代謝に関連するたんぱく質の活動も高まり、トレーニング効果が増すという考え方である。
この理論については、極度の糖質制限(1日1.0g/kg未満)のトレーニングで、脂質利用の割合が高まった=持久力が上がったというケースもあれば、脂質利用の割合は上がったものの、持久力アップにはつながらなかったというケースもある。
脂質利用が増えるということは、酸素の運搬・消費機構の負荷が増すことも意味する。加えて、糖質の貯蔵量をあえて落としての運動を繰り返すことで、糖質利用能力が下がるという可能性も考慮しなければならない。
糖質制限を行いつつトレーニングを行っている選手としては、トレイルランナーやクライマーが挙げられる。前者は超長時間の運動であるし、後者はそもそも登山時に持ち込める食料が少ないため、脂質利用能力が重要となる。競技特性上、この2つに該当するスポーツをする選手やクライアントに対しては、糖質制限下のトレーニングは有効と言えるだろう。
(3)試合前日まで
1)筋グリコーゲンローディング
一般に「グリコーゲンローディング」「カーボローディング」と呼ばれる手法。マラソン、トライアスロン等持久系のスポーツにおいて、試合前にグリコーゲン貯蔵量を高めるための手法としてよく用いられる。筋グリコーゲンローディングは短時間かつ高強度のスポーツではあまり有用でないほか、試合直前に体重も1kgほど太るため、パフォーマンスへの影響を考慮する。
①古典的グリコーゲンローディング
試合前6日間から開始。前半3日間は低糖質食かつ高強度のトレーニングで、グリコーゲンを枯渇させる。後半3日間は高糖質食を摂取する。前半3日間で倦怠感やストレス、睡眠障害に悩まされやすい。現在はあまり用いられない。
②改良型グリコーゲンローディング
試合前6日間で実施。古典的手法の反省を活かし、前半3日間は中糖質食を摂取。後半3日間は高糖質食を摂取する。
②最新型グリコーゲンローディング
試合2日前から高糖質食を摂取する。持久系競技のアスリートは、筋グリコーゲンを取り込む能力が高い傾向にある。また、高糖質食を摂取すると、24時間程度で筋グリコーゲンが最大量まで貯蔵される特性がある。
2)ファットローディング
試合前の5~6日間で、高脂肪・低糖質の食事にするというもの。総エネルギーの脂質の割合を60~70%、糖質摂取量を1日あたり2.5g/kg程度にし、脂質利用能力を高める。試合前日だけ高糖質食に切り替えて、筋グリコーゲンを貯蔵する。
主にトップアスリートに対して行われる手法だが、持久力工場が期待できるという一方で、パフォーマンスが向上したという報告は多くない。また、一般人に対して長期(6日間)、短期(1食のみ)のそれぞれでファットローディングを行った研究においても、長期ファットローディングで自覚的なつらさの改善が見られたものの、心拍数等実数値での改善は見られなかった。
これは脂質利用能力の向上に対して、糖質利用能力の低下が起こっているという指摘や、試合前日の高糖質食により、その利点が阻害されているという意見がある。糖質制限による「train low」と同様に、競技特性によって向き・不向きがあると言えるだろう。
(4)試合当日
睡眠中、体内の肝グリコーゲンは60%程度まで減少していると言われる。前日の夕食でできる限り肝グリコーゲンの貯蔵を最大にし、当日の朝・昼に肝グリコーゲンを再度貯蔵する。試合の3〜4時間前までには、高糖質食を中心とした食事を済ませる。ただし、過度な高糖質食は胃腸への負担が大きいため、1時間ごとに100%オレンジジュース、エネルギーゼリーといった糖質源を摂取するとよい(食事は1時間前でストップすること)。
(5)試合中
①グルコース摂取
試合中のグリコーゲン消費量は、活動筋1kgあたり30~60g/時とされる(中〜高強度の運動)。さらに試合中は発汗による水分の補充も必要であるため、両者の問題を解決できるスポーツドリンクがおすすめである。
②フルクトースとグルコースを両方摂取する
グルコースならびにショ糖は、長時間運動で欠かせない脂肪酸動員を抑制するという特性がある。マラソン等の長時間競技では、脂肪酸代謝の抑制効果がないとされるフルクトース摂取により、グルコース摂取と同程度に血糖値が維持されるという報告もある。
2−5)試合終了後
①量・タイミング
試合終了後30分以内など、早いタイミングの糖質摂取で筋グリコーゲンの回復が促されるとされている。その後、15~30分毎にエネルギーゼリー半分の糖質摂取を行うことで、消化管の負担を減らしつつ筋グリコーゲンの回復をさらに早められる。
②たんぱく質の同時摂取
糖質とたんぱく質(アミノ酸)を同時摂取すると、(膵臓から)インスリン分泌量が高まるとされる。この効果は、1時間あたり1.0g/kg未満の糖質を摂取する場合(60~75kgのアスリートであれば、おにぎり2個程度の糖質)に見られる効果である。それ以上の場合、糖質単体でインスリン分泌の向上が確認できる。
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