2021.10.09ブログ
第54回 ファットアダプテーション(持久系スポーツへの影響)
ファットアダプテーションとは、長期的に高脂質食を摂り、意図的に脂質の摂取量を増やす食事方法である。主な目的としては「グリコーゲンの枯渇を防ぐ」「脂質の利用能力を高める」が挙げられる。ファットアダプテーションは、特に長時間の運動を強いられる持久系スポーツにて、使用される機会が多い。
(1)メカニズム
1)PPARβ/δの関与
持久系トレーニングと高脂質食摂取を組み合わせた場合、骨格筋のミトコンドリアが増加したという研究がある。このメカニズムは、※核内受容体のPPARβ/δが関係するという。
※核内受容体
細胞内タンパク質の一種であり、ホルモンなどが結合することで細胞核内でのDNA転写を調節する受容体である。発生、恒常性、代謝など、生命維持の根幹に係わる遺伝子転写に関与している。
PPARβ/δは、脂肪酸参加系酵素の遺伝子のプロモーター領域に結合し、これら酵素の遺伝子発現を活性化する作用を持つ。高脂質食により血中で増加した遊離脂肪酸が、骨格筋細胞内に取り込まれ、PPARβ/δを活性化。それにより、ミトコンドリアが増加する。
2)PGC-1αの関与
高脂質食+持久系トレーニングでは、1)のメカニズムに依拠しないミトコンドリア系酵素もおズカしていることが判明している。その要因として挙げられるのが、※PGC-1αである。
※PGC-1α
転写因子 PPARγ に結合する転写コアクチベーターとして同定された分子。エ.ネルギー産生や熱消費に関わる多くの遺伝子発現を制御する。
一過性の長時間運動を行うと、直後にPGC-1α遺伝子のmRNA増加が見られる。高脂質食を1度摂取しただけでは、PGC-1αの発現量の変化は見られないが、同様の食事を4週間程度継続すると、PGC-1αのタンパク質発現量の増加が見られた。食事によるPGC-1α増加は、運動とは違いPGC-1αのたんぱく質分解を抑制し、徐々に発現量を増やしていると考えられる。
(2)パフォーマンスへの影響
Goedeckeらは、高脂肪(総摂取エネルギー69%)低糖質の食事で5日間のトレーニングを行うことで、運動中の脂肪利用率が大きく高まるという研究を示している。この脂質適応能力は、実験後1日の休息を取り、その間高糖質食で筋グリコーゲン回復を促し糖質の利用効率を高め、かつ長時間の運動前・運動中に炭水化物を摂取した場合でも、一貫して強固であったと示されている。
なお、高糖質食の期間を3日以上に延長すると、筋グリコーゲン貯蔵量が超回復し、運動中の高糖質利用率も増加していた。さらに、高脂質食への適応により、※血漿ノルエピネフリン濃度と運動時の心拍数増加を及ぼす=トレーニング効果の増加につながる可能性も示唆されている。
※血漿ノルエピネフリン
交感神経の情報伝達に関与する神経伝達物質
1)要因
こういった食事プログラムが運動パフォーマンスに与える影響については、有益であるor変化がないor悪影響だなど、複数の研究が異なる見解を示している。脂質代謝の変化とパフォーマンスの結果が明らかに一致しない要因は、いくつもの理由が挙げられる。
・スポーツにおいて価値があると思われるパフォーマンスの小さな変化を検出できない。
・ファットアダプテーションに反応する人、反応しない人が存在する
2)代謝への注目
従来の研究は、高脂質食に伴う「代謝の変化」に注目してきた。推定脂肪酸トランスポーターや、脂質代謝酵素の増加の推移などがそれに該当する。しかし、研究当初は高脂質食に適応した後の「グリコーゲンの温存」と考えられていた研究結果が、実際には糖質代謝のダウンレギュレーション、すなわち「グリコーゲンの障害」である可能性を示す証拠も出ている。
ある研究では、脂肪適応(および糖質回復)の栄養戦略が、※ピルビン酸デヒドロゲナーゼの活性低下と関連していると報告されている。この反応は、筋グリコーゲンの要求量が高い時、グリコーゲン分解率を低下させる作用があると考えられる。Havemannらは、脂肪適応/糖質回復の食事モデルを、実際のレースの特徴と合致する条件で検証。
すると、高脂質食の栄養戦略は、100kmタイムトライアルの総合的なパフォーマンスには影響しないが、十分にトレーニングを積んだ競技者の高強度スプリントの能力を損なうことが判明した。
※ピルビン酸デヒドロゲナーゼNADP+
依存的にピルビン酸を酸化してアセチルCoAを得る反応を触媒する酸化還元酵素
3)長距離選手のパフォーマンスに影響する要因
持久系のスポーツをする選手にとって、脂肪利用率の向上はグリコーゲン枯渇に有益だとされる一方、同種のスポーツは実際のところ、逃げ切りや上り坂での急加速、ゴール前の疾走など、高度な能力に依存していることも事実である。高脂質食による体内での作用は、こうした高度な能力が損なわれるという研究結果が近年増えている。
こうした研究から、持久系スポーツ(これはマラソンに限らず、球技など一定のインターバルを挟みつつ、長時間の運動をするアスリートにも当てはまるだろう)における、グリコーゲン枯渇抑制としてのファットアダプテーションは、悪影響が多い。
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