2021.11.06ブログ
第58回 ナイアシンの健康、パフォーマンスへの影響
ナイアシンは水溶性ビタミン群の一つであり、ニコチン酸、ニコチンアミドの総称である。ニコチン酸は植物性食品に、ニコチンアミドは動物性食品に多く含まれている。ナイアシンは摂取後、肝臓でNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)となり、脱水素補酵素として糖質、脂質、たんぱく質の代謝や、エネルギー産生にかかわる。
近年、NADと健康、パフォーマンスへの影響に関する研究が、国内外で広く報告されることにより、ナイアシン(で合成されるNAD)の新たな作用や重要性が再注目されている。
特に、老化および老化関連疾患はNAD+量の低下や,およびNAD+依存性脱アセチル化酵素サーチュインの活性低下と密接な関わりを持つことが示されている。(いくつかの研究、サイトでは、体内に存在する酸化型のNAD+を「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」と表記している。本項では、NAD、NAD+のいずれも「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」を意味するものとして解説する)
1)NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)
ここ数年、アンチエイジングで非常に注目されているNMNは、NAD合成の経路において、※律速酵素として働く(NMNサプリメントのアンチエイジングや健康効果については、別の記事で解説する)
※律速酵素
ある一連の生体内の反応において、最も酵素活性量が少なく、反応全体の速さを決定する反応を触媒する酵素
(1)健康への関連
NAD+の細胞内レベルを上昇させると、老化を遅らせて筋肉機能を回復させ、脳での神経再生を促進し、代謝性疾患に対する保護作用をもたらすと言われている。
J Auwerxらは、NAD+の※de novo合成を増加させて、そのレベルを上昇させる実験を線虫、マウスに実施。具体的には、NAD+の前駆物質α-アミノ-β-カルボキシムコン酸-ε-セミアルデヒド(ACMS)を基質とする酵素α-アミノ-β-カルボキシムコン酸—セミアルデヒドデカルボキシラーゼ(ACMSD)を阻害するという方法で、遺伝子的・薬理学的な手法で線虫、マウスに行われた。
NAD+の合成を妨害してしまうACMSDの生合成を阻害することで、ACMSDの生合成が減ったことで、NAD+量が増加。それによりミトコンドリアの活性が増強され、線虫の場合は寿命の延長、マウスは疾患からの保護といった作用が見られた。
※de novo(デノボ合成)
生物の代謝経路において、ある物質が原料となる別の物質から、新しく生合成されることを意味する。ヌクレオチドや核酸の生合成において用いられることが多い。
また、Eija Pirinenらは成人後に発症したミトコンドリア型※ミオパチー患者のNAD+欠乏を確認する方法に血液分析が有効であるとし、NAD+の増強による身体の変化を調査。増強剤としてナイアシンを10カ月または4カ月間、増量して投与。(750~1,000 mg/日まで)全被験者の血中NAD+は最大で8倍増加。一部の患者には貧血傾向が見られたが、全被験者で筋力とミトコンドリア生合成が増加したという。
また、患者では、筋肉の※メタボロームが増加し、肝臓の脂肪が約50%減少した。これらの結果から、血液分析はNAD+不足を特定するのに有効であり、ナイアシンはミトコンドリアミオパシーの治療に有効なNAD+ブースターであることが示された。
※ミオパチー患者
筋肉の疾患を総称した言葉。 遺伝的な原因で起こるものとして、筋肉の病理像に特徴的がある「先天性ミオパチー」や、なんらかの代謝の障害によって起こる「代謝性ミオパチー」がある。
今回紹介の「ミトコンドリア型ミオパチー」は、まぶたが下がり、目が動きにくくなる慢性進行性外眼筋麻痺、脳卒中様の症状を伴うメラス(MELAS)、ミオクローヌスてんかんを伴うマーフ(MERRF)などの病型がある。しばしば糖尿病や難聴を合併する。
※メタボローム
メタボロミクスあるいはメタボローム解析とは、細胞の活動によって生じる特異的な分子を網羅的に解析することである。メタボロームという語は、ある生物の持つ全ての代謝産物を表す。
(2)パフォーマンスへの関連
NAD+がパフォーマンスにどう影響するかについては、マウスやヒト両方での研究が進められている。そのなかで注目されているのが、骨格筋に与える影響だ。
Crisolらは、マウスに対して※NRを1日に400mg/kgを5週間、10週間でそれぞれ摂取させた。NRの投与期間中は、1日1時間、週5回のトレーニングを行わせている。NR投与だけの群は持久性運動のパフォーマンスは工場しなかった。トレーニングとの併用群の場合、トレーニング単独(NR投与せず)よりも、筋力の増加や、疲労するまでの時間の向上が見られている。
※NR(ニコチンアミドリポシド)
NAD+の中間代謝産物
またDonald A. Lambranoらは、レジスタンストレーニングが筋肉のNAD+および※NADH濃度、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(Nampt)レベル、サーチュイン活性に影響を与えるかどうかを検証。
※NADH
補酵素の一つ。NADの還元型。
※Nampt
脂肪組織から分泌される,ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の生合成に関与するアディポカイン(脂肪細胞から分泌される生理活性たんぱく質の総称)
普段トレーニングをしていない中年者(59±4歳、n=16)を対象に、10週間の全身レジスタンストレーニング(週2日)を実施。体組成、膝伸展筋力、外側広筋の筋生検(筋肉や神経の一部を切り取り、組織を調べて診断すること)によって、トレーニング前後で数値の変化を計測した。
すると、運動前後で次のような結果が得られた。なお、トレーニング後は最後のトレーニングから72時間後のものである。
・筋NAD+ +127%
・NADH +99%
・サーチュイン活性 +13%
・Namptレベル +15%
この研究では、比較のためにトレーニングを行った大学生の男性(22±3歳)も参照している。中年者のトレーニング前の筋NAD+とNADHは、大学年齢の参加者よりも低かったが、トレーニング後は同程度の数値まで近づいた。
また中年男性の参加者は、トレーニング後で筋肉のクエン酸合成酵素活性レベル(ミトコンドリア密度)が+183%増加し、筋NAD+の増加と有意に関連していたという。
この点から、トレーニングによって筋NAD+,NADH,およびグローバルSIRT活性は,トレーニングをしていない中高年者のレジスタンストレーニングによってプラスに作用することがわかった。
運動とNAD(ナイアシン)の関連性については、上述のように正の関係性を示すものもあれば、大きな影響はないとする研究も見られる。一方で、すでにNMNやNRは抗老化サプリメントとして広く認知されているように、健康面での影響は、今後も多くの研究で立証されていくことだろう。
アスリートのパフォーマンスアップを主体とした食事指導では、魚介類、肉類、きのこ類、穀類に多く含まれるため、ほかの栄養摂取と並行して指導しやすい。ナイアシンはトリプトファンからも体内で生合成されるので、たんぱく質の摂取と合わせてアドバイスするのも有効だ。
#FUJIIパーソナルジム #杉並区 #方南町 #駅近 #筋トレ #ダイエット #パーソナルトレーニング #ボディメイク #健康 #美尻 #体験トレーニング #FITFOODHOME #@fitfood_home
Category
New Article
Archive
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年4月