2021.11.20ブログ
第60回 睡眠と栄養の関係性について
睡眠障害や睡眠の質の低下がみられると、成長ホルモンの分泌が少なくなるなど多くの健康問題に発展する。反対に、睡眠の質が高ければむくみの解消や体重減少、日中の集中力の向上など多くの効果を見込める。ここでは、睡眠の質を向上するためにしっておきたい栄養学的観点で話をしていきたい。
(1)睡眠不足の栄養学的原因
睡眠不足による最大の問題点は、ホルモンが生成できないことにある。睡眠中に分泌されるホルモンとして、よく知られているのが成長ホルモンは、身体のターンオーバーに欠かせない。身体の各機能と密接に関わるホルモンが、睡眠不足で分泌されなくなるのだ。
そんな睡眠不足の原因となるリスクとして、栄養学的観点では次のものが考えられる。
1)カフェイン
カフェインは交感神経優位を誘発し、睡眠を阻害することで知られる。コンビニ等で販売されている『眠眠打破』にも、カフェインが大量に含まれる。常飲することによる「慣れ」により、睡眠不足につながらない人もいる。しかし飲みなれていない人や、間隔をあけてカフェインを摂取した人の場合、午前中~昼に飲んだコーヒーやカフェインを含む飲料により、睡眠の質が低下するリスクをはらむ。
『眠眠打破』などの飲料の場合、眠気が完全に取れるわけではなく、「眠いけれど目や脳が冴えている」という状態を無理やり作ることとなる。仮にこの状態睡眠時間を確保したとしても、熟睡できていないので眠気が取れない感覚に襲われる。
疲労回復、自律神経の乱れに悩む方は、1週間程度カフェイン摂取を控えるようにするのも有効だ。
2)砂糖・甘味料
血糖値の増減を激しく誘発する。高血糖の状態での睡眠は、成長ホルモン分泌が抑制されると言われている。血糖値の急上昇はドーパミン、アドレナリンが分泌=交感神経優位となり睡眠障害に陥る危険性が高くなる。
3)グルタミン酸
味の素の製品が該当する。神経の興奮を促し、また依存性も高い。
4)アルコール
寝る前にアルコールを飲むと眠りやすいという話は多い。ここで注意したいのは、アルコールは「入眠」をスムーズにしてはくれるものの、ノンレム睡眠を阻害する=深い眠りにつけていない状態であるということだ。
ヒトの睡眠は、入眠30分後に訪れる最初のノンレム睡眠が、もっとも深い睡眠だとされている。このタイミングでは体内に多量のアルコールが残留しているため、交感神経優位で海馬、前頭前野もうまく働かない。つまり脳機能がうまく休めない状態でもっとも深い眠りに達してしまうこととなる。
アルコールを夜常飲する人は、その習慣が長期化している場合、気持ちよく眠れたという感覚があるものの日中眠くなるという症状に悩まされやすい。
5)副腎疲労
日中に強いストレスを感じると、コルチゾールの過剰分泌を招く。そもそもコルチゾールは起床直前に分泌され、一定以上まで血糖値を高め目覚めを促す機能を持つ。これにより、起床後すぐにヒトは行動ができるのである。
しかし、日中にストレスへ対抗するためコルチゾールが過剰分泌されると、副腎が疲労して朝方にコルチゾールを分泌できなくなってしまう。日中ストレスを強く感じている人は、朝なかなか起きれないという事態に見舞われやすい。
症状が重い人の場合、低血糖すぎて起床後もしばらくベッドから出られず、無気力感にさいなまれる。ひどい状態では、起床後20~30分など長時間にわたり、目は覚めているのに身体を動かせないこともある。
(2)睡眠を誘発する栄養素
1)トリプトファン+ビタミンB6
睡眠ホルモンとして知られるメラトニンの生成に欠かせない必須アミノ酸である。また、トリプトファンを含むほぼすべてのアミノ酸代謝には、ビタミンB6が不可欠だ。ビタミンB6がないと、ドーパミン、GABA、セロトニンも生成されない。
アミノ酸摂取が話題になった場合、その代謝に必須となるビタミンB6とセットに考えるとよい。
2)鉄
睡眠障害に悩む被験者を対象とした調査では、鉄の欠乏が多く見られたという結果が多く報告されている。
鉄は脳内でドーパミン合成を行う、チロシンヒドロキシラーゼの律速酵素の活性化に必要だ。ドーパミンは幸福感、モチベーション形成・維持にかかわるため、鉄不足でドーパミン分泌が減少すると睡眠時間の短縮につながると考えられている。睡眠障害の患者の栄養調査をすると、かなりの割合で鉄欠乏が見られる。
3)マグネシウム
マグネシウムはセロトニン、メラトニン生成で非常に重要なミネラルである。ある研究では、高齢者46名に対する二重盲検(医学の試験・研究で、実施している薬や治療法などの性質を、医師からも患者からも不明にして行う方法)で、8週間500mgのマグネシウムを投与。その結果、睡眠時間、睡眠の質、メラトニン分泌量が有意に向上した。
対象者数は少ないが、マグネシウムを一定期間大量摂取することで、睡眠の質が向上したという事例である。
4)ビタミンD、ビタミンB12
情緒安定化、睡眠の質に関与するセロトニンの合成に関与する。ビタミンB12もセロトニン、GABA、メラトニン合成に深くかかわっている。特にビタミンB12については、一定期間の被験者への投与により、睡眠の質の向上、爽快感と有意な相関を示したという研究もある。
【番外編】カモミール、ラベンダー
カモミールは人類の歴史のなかでも、非常に古くから皮膚トラブル、炎症、心疾患への対処法として用いられてきた。カモミールは「眠りを誘うハーブ」としても扱われている。
ラベンダーもまた、ヒトを睡眠に誘う香りとして、もっとも有名なもののひとつだ。海外では、睡眠薬を常用する患者にラベンダーの香りを嗅いでもらったところ、薬なしで睡眠が深くなり、深夜徘徊といった症状が見られなくなったというものもある。
(3)メラトニン生成のメカニズム
メラトニンは主に、次の経路をたどり生成されている。
トリプトファン(L-トリプトファン)
↓ (鉄、カルシウム、葉酸、ナイアシンが必要)
5HTP(5-ヒドロキシ トリプトファン)
↓ (ビタミンB6、マグネシウムが必要)
セロトニン
↓ (マグネシウムが必要)
N-アセチルセロトニン
↓ (マグネシウム、葉酸、ビタミンB12)
メラトニン
※カルシウムは副交感神経優位にする作用もある。
この経路からも、鉄、マグネシウム、ビタミンB群が重要であることが窺える。
(4)メラトニンとブドウ糖の関連
脳メラトニン合成において、実はブドウ糖も必要である。糖の摂取でインシュリンが分泌され、体内のアミノ酸とともに筋へと運搬される。これが筋合成で糖も必要だとされる所以だが、実はこの作用において、トリプトファンはセロトニン合成のため、血液脳関門を通じて脳へ輸送される。
(5)サプリメントの有効性
どうしても睡眠の質を向上させたいとした場合、ひとつの手段としてメラトニンサプリメントという手段もある。ただし、メラトニンはメチル基を含むため、非常に稀なケースではあるが常用・過剰摂取で遺伝子発現に問題が生じる可能性があるとされている。
サプリメントに依存すると、体内でホルモン等を生成する能力が弱化するという指摘も多い。最終生成物であるメラトニンではなく、トリプトファンを食事で摂取するという意識は、忘れずに持つようにしたい。
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