2022.01.08ブログ
第66回 ヘム鉄のリスク(1)がんとの相関
(1)鉄の栄養学の基礎
鉄は人体に約3gあるとされ、約65%が血液中のヘモグロビンの構成成分となり、酸素運搬に深く関係すいている。食品中に含まれる鉄は、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類に分けられる。ヘム鉄はたんぱく質と結合し、肉や魚といった動物性食品に多く含まれる。
非ヘム鉄は植物性食品に多く含まれ、ヘム鉄以の無機鉄を指す。ちなみに、レバーも比率的には非ヘム鉄の方が多い。非ヘム鉄=植物性食品としないよう注意が必要だ。2種類の鉄は、体内への吸収率に大きな差がある。ヘム鉄の吸収率は約10~25%だが、非ヘム鉄は約2~5%とかなり低めだ。
特に鉄は日本人の不足しやすい栄養素として知られる。鉄不足で多くみられるのは「鉄欠乏性貧血」だ。身体がだるい、息切れ、疲れやすいなどの症状が見られる。
貧血予防として、マグロ、カツオ、肉類を通じて鉄を摂取する人は多い。近年はフィットネスブームも相まって、赤身肉は健康によく、脂質も少ないのでダイエットに適しているという認識も広がっている。貧血予防で必要な鉄、たんぱく質を効率的に摂取できることも大きい。
しかしその一方で、ヘム鉄にはいくつか健康リスクへの懸念が指摘されている。
(1)ヘム鉄の過剰摂取は病気リスクを高める
日本人に不足しがちな鉄だが、基本的に「病院等で処方されていない限り、鉄サプリには頼らないほうがいい」というスタンスを提唱している。高濃度のヘム鉄の摂取は、ここで取り上げる様々な疾患のリスクを高めると指摘されているからだ。
例えば、下記の3研究では、ヘム鉄の摂取量が多いグループをそれぞれ調査したものである。
①1986年~2002年にかけて、アメリカ人44,758人を対象に調べた研究では、ヘム鉄の摂取が多いグループで胆石症のリスク増大が見られた。
②2013年、45歳~79歳の計38,859人を対象とした研究では、ヘム鉄の摂取が多いグループで脳卒中のリスク増大が見られた。
③2013年、252,164人を対象とした研究では、ヘム鉄の摂取が多いグループで心臓血管系の疾病リスクの増大が見られた。なお非ヘム鉄摂取の多いグループでは、それが見られなかった。
ここで興味深いのは③の研究である。世界的な健康調査レポートとして知られるアメリカの※マクガバン・レポートにおいて、実は貧血予防・改善にヘム鉄の摂取は「効果がなかった」と結論付けられている。それが現代に改めて証明され、かつ非ヘム鉄にはそうした健康上のデメリットがない(少ない)という認識が広がっているのである。
※マクガバン・レポート
1977年に発表された報告書で、正式名称は「アメリカ合衆国上院特別栄養委員会報告書」。委員長ジョージ・マクガバンの名前から通称として呼ばれている。アメリカ医療は豊富な予算で進歩しているのに、なぜガンをはじめとした病人は増え続けているのかという疑問から、国家プロジェクトとして調査した。
ここで軽く紹介した以外でも、ヘム鉄の過剰摂取は糖尿病、大腸がん、乳がん、胃がん、食道がんなど全身の重大な病気との相関関係が見られている(ヘム鉄の摂取そのものが問題ではなく、ヘム鉄の「過剰摂取」が問題だという点に注意したい)
(2)ヘム鉄とガンとの関連
上記を見ると、ヘム鉄の過剰摂取が多くのがんの発症リスクに関わっていることがうかがえる。その要因として、ヘム鉄は発がん性のある※N-ニトロソ化合物の生成を促すとされている。
※N-ニトロソ化合物
ニトロソ基(-NO)のついた化合物で、不安定で発がん性が強い。基本的に食品添加物の亜硝酸塩とアミノ酸から腸内細菌が作る、アミンの反応により体内で生じる。
この作用は、ヘム鉄を多く含む動物性食品のたんぱく質(アミノ酸残基)でも非ヘム鉄でもなく、ヘム鉄そのものによって起きているものと現在結論付けられている。
例えば赤身肉には、高濃度のミオグロビンが含まれている。ミオグロビンはアミノ酸の一種で、ヘム鉄を保護する役割があり、実際に赤身肉のヘム鉄含有量は、白身肉の約10倍とされる。肉の種類によって異なるので、赤身肉の方が白身肉より多くのヘム鉄がある程度に認識してほしい。また、貧血の改善を目的に、短期的に赤身肉を多く食べる分には問題がないということは、念を押して伝えておきたい。
(3)ヘム鉄が発がんリスクを高めるメカニズム
1回あたり8mgの鉄が摂取できるサプリメントを飲むグループと、低肉食者のグループとを比較した研究では、便中のN-ニトロソ化合物が増加していた。ここでも先ほどの研究と同様で、非ヘム鉄の摂取グループで便中のN-ニトロソ化合物の増加はみられなかった点である。
さらに、便中から検出されたN-ニトロソ化合物の量を換算すると、たばこの煙中にあるニトロソ化合物と同等だった。たばこや赤身肉は、国際がん研究機関(IARC)でも発がん性が「ある」と断言されているが、それを裏付けるような結果ともいえる。
ヘム鉄は、生体内の過酸化脂質がヒドロキシノネナール、マロンジアルデヒドといった酸化二次生成物のアルデヒドに触媒してしまう。つまり、ヘム鉄は体内で余剰にある酸化した脂質を、発がん性物質へ変性させるメカニズムに関わっているのだ。この作用により、ヘム鉄は種類を問わず多くのガンの間接的原因となってしまうと指摘されている。
1)赤身肉を食べてはいけないのか?
あくまでこの話でポイントとなるのは、ヘム鉄の過剰摂取の問題点であり、赤身肉を一切食べてはいけないという話ではない。常識的な範囲で楽しむ分には、問題はないと考えているし、アスリート(特に女性アスリート)は、一般人よりも多くの鉄分を摂取する必要がある。
・医師から貧血改善のために鉄分摂取を指導されているわけではない
・日頃運動量も少なく、汗をかく(ミネラルが排出される)ことも少ない
こういった人が、サプリメントを常用したり毎日大量の赤身肉を食べたりするという食生活をしている場合、注意した方がいいだろう。
糖尿病の予防・改善や糖質制限で赤身肉を多く摂取する人は、特に男性で多くみられる。一般的に赤身肉は健康にいいともされているが、自身が糖質制限食を実施している、あるいはクライアントに糖質制限を指導している場合は、今一度赤身肉の大量摂取=ヘム鉄の過剰摂取が起きていないか見直した方がいい。
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