2022.01.15ブログ
第67回 ヘム鉄のリスク(2)健康リスクを抑える工夫
前回の「ヘム鉄のリスク(1)がんとの相関」では、主にヘム鉄の健康上のリスクについて、がんという観点から様々な研究とともに解説した。
今回は、先の記事で触れたヘム鉄の発がん作用に対して、どのような対処が取れるのかを解説したい。
(1)発がん作用を阻害する物質
ヘム鉄の過剰摂取をすると、発がん性のある※N-ニトロソ化合物の生成を促すとされている。
※N-ニトロソ化合物
ニトロソ基(-NO)のついた化合物で、不安定で発がん性が強い。基本的に食品添加物の亜硝酸塩とアミノ酸から腸内細菌が作る、アミンの反応により体内で生じる。
また、ヘム鉄は生体内の過酸化脂質がヒドロキシノネナール、マロンジアルデヒドといった酸化二次生成物のアルデヒドを触媒することも知られているが、このメカニズムを阻害する物質として、以下のものが挙げられる。
・クロロフィル(野菜等に含まれる緑色の色素)
・カルシウム
・ビタミンC(特に重要)
・ビタミンE
・ケルセチン 等
この中でも顕著な働きを見せるのが、ビタミンCだと言われている。
(2)鉄とビタミンCの関係
そもそも、取り込んだ鉄の吸収率は、ヘム鉄の吸収率は約10~25%で非ヘム鉄は約2~5%と言われている。いずれの場合も、食事として吸収される割合が、非常に低いことがうかがえる。
ヘム鉄含有量の多い肉類として知られるのが、牛肉、ラム肉、馬肉である。そして、少ない肉類に分類されるのが豚肉、鶏肉だ。同じ赤身肉の分類でも、豚肉はヘム鉄含有量が少ない(実際に、ヘム鉄含有量の多い3種の肉と比較すると、肉自体の色も牛肉より鶏肉に近い)
鉄の発がん作用というのは、ここで吸収されない余剰分の鉄が、発がん物質を生む原因と捉えられている。つまり、先に上げた吸収率をなるべく高め、体内に鉄を吸収できれば、鉄が悪さを働く作用を抑えられるのでは?という考え方があり、それと関連しているのがビタミンCなのである。
ビタミンCは、鉄の吸収を促進する作用として、もっとも知られている栄養素だ。実際に、多くの研究や一般レベルの知識として、ビタミンC・鉄を同時に摂取することで鉄の吸収率を飛躍的に高めることができると知られている。
(3)鉄分不足にヘム鉄摂取をするうえでの注意点
食事指導のシーンで、鉄分不足を補うためにヘム鉄の摂取をアドバイスすることは多いだろう(肉類の摂取が推奨されることが多いことから、ヘム鉄に限定している)。しかし、実は腸内環境が悪化している人の場合、ヘム鉄摂取量の増加がより悪い結果を生むことがある。
貧血に悩まされている人のなかには、しっかりと(自己申告ではなく客観的にみても)食事で鉄を摂取できているという人が少なくない。これに該当する人は、日々のストレスなどで腸内細菌に一つであり、常在菌のカンジダ菌が増えている可能性が考えられる。
カンジダ菌は鉄をエサとしているため、貧血改善で肉類を摂取した結果、かえってカンジダ菌のエサを増やして腸内環境を悪化させてしまうリスクがある。
腸内環境の状態をヒアリングだけで判断することは難しいが、食事改善の方向性として、植物性食品の摂取量を増やして腸内環境の改善を図りたい。そこで体調等の様子を見つつ鉄分摂取量を増やすことで、効率のよい健康改善が行える。
(4)「赤身肉」の摂取基準
2007年に世界がん研究基金と米がん研究協会は、赤身肉の摂取量は週500g以内(調理後の重量)にすることが望ましいとされている。一見多く見えるが、日常的に肉類を摂取している人の場合、気を付けないとすぐにオーバーしてしまう量だ。糖質制限食を実践している人は、特に注意が必要だろう。
もちろん、個人差を踏まえた調整は視野に入れるべきだろう。しかし、ここで難しいのは「個人差をどう見極めるか」だ。決してこの摂取基準とは、「体格が大きければいっぱい食べていい」という単純な理由ではないため、安易に「私はこれくらい食べても大丈夫」と思わないようにしたい。
がんになる原因はヘム鉄以外にも多く、特定はできない。我々にできることは、現在明らかとされている疾患リスクをなるべく避けることだ。赤身肉は現在がんのリスクを高めると明言されている存在である以上、一定の節度をもって摂取するよう心掛けたい(前回の記事の通り、一切食べないというわけではない)
※赤身肉と加工肉で懸念される発がん性の「落とし穴」
赤身肉と加工肉の研究は、8割以上が欧米で行われている。一方アジアで行われている研究では、実は赤身肉・加工肉とガンとの相関は(ないわけではないが)弱いという報告が多い。
食肉の品質なのか。アジア人と欧米人の体質の違いなのか。食べ合わせの違いによるものなのか。アジア圏での研究数がまだ少ないため、その特定には至っていない(今後の研究で、欧米人とリスクは変わらないという結果になることも十分ありえる)
アジア圏(特に日本)は野菜(食物繊維)摂取量が多いことが関係しているのでは?という意見もあるが、実は現在、日本人よりも欧米(アメリカ、イタリア等)の方が野菜摂取量は多い。野菜摂取量によってガン発症リスクが低減されているわけではないことが、ここから分かる。
今後の研究によって、アジア圏の鉄とガンの相関がはっきり分かることを待ちたい。その間は、より研究数が多い欧米の基準にならい、赤身肉の摂取量をコントロールするのがいいだろう。
#FUJIIパーソナルジム #杉並区 #方南町 #駅近 #筋トレ #ダイエット #パーソナルトレーニング #ボディメイク #健康 #美尻 #体験トレーニング #FITFOODHOME #@fitfood_home
Category
New Article
Archive
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年4月