2022.02.26ブログ
第73回 ビタミン・ミネラル過剰摂取の弊害
栄養・食事摂取において、ことビタミン・ミネラルといった微量栄養素については「不足を補う」シーンが非常に多い。単一(あるいは複数)の栄養素の欠乏は、当然のことながら人体には悪影響だ。一方で、過剰摂取もまた体調不良や病気リスクにつながることもある。
(1)日本人の栄養の過不足を定める「食事摂取基準」
厚生労働省が定めている食事摂取基準とは、以下のことをまとめた資料である。
食事摂取基準は、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、エネルギー・栄養素欠乏症の予防、生活習慣病の予防、過剰摂取による健康障害の予防を目的とし、エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示すものである。
(厚生労働省より引用)
つまり、専門家が健康増進や生活習慣病の予防・重症化予防を視野を視野に入れた、摂取すべき栄養素の基準を定めたものである。複数研究・専門家達によるエビデンスに基づく策定を基本としており、栄養素の研究課題を整理をするという役割も担っている。
この基準をもとに、病院で出される病院食や学校で食べる給食などの食事の栄養素が決められている。食事摂取基準は、5年に1度改定が行われる(現時点での最新版は2020年版)。科学的な最新エビデンスでは、日々様々な報告がなされている。食事摂取基準は、発表時点でもっとも確かな情報をまとめた、健康の指標となる資料の一つと言えるだろう。
食事摂取基準は、以下の栄養素について定められている。
・たんぱく質
・脂質
(総脂質、飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸、コレステロール)
・炭水化物
(糖質、食物繊維)
・脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)
・水溶性ビタミン(ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン)
・多量ミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン)
・少量ミネラル(鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン)
1)栄養素の「指標」
食事摂取基準では、栄養素の摂取量を5つの指標で設定している。また、これらはいずれも日本人に当てはめた数字なので、海外の定める量とは一致しないケースも多いことに注意したい。
・推定平均必要量(EAR)
特定の集団を対象として測定された必要量から、性・年齢階級別に日本人の必要量の平均値を推定。各階級に属する人々の50%が必要量を満たすと推定される1日の摂取量
・推奨量(RDA)
ある性・年齢階級の人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
・目安量(AI)
EAR、RDAの算定に必要な科学的根拠が不十分の場合、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
・目標量(DG)
生活習慣病の一次予防のために、現代日本人が当面の目標とすべき摂取量(あるいは、その範囲)
・(耐用)上限量(UL)
ある性。年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康被害を起こすことの内栄養素摂取量の最大限の量
2)上限量が決まっている栄養素・決まっていない栄養素
食事摂取基準のなかでは、上限量が決まっている栄養素と決まっていない栄養素がある。決まっている栄養素は、以下にまとめられる。
・ビタミンA、D、E、B6
・ナイアシン
・葉酸
・カルシウム
・マグネシウム
・リン
・鉄
・亜鉛
・銅
・マンガン
・ヨウ素
・セレン
・モリブデン
これらに上限量が定められているのは、2つの理由がある。ひとつは、体内に蓄積される栄養素という点。もう一つは、過去にサプリメントによる過剰摂取で、人体に悪影響を及ぼしたという事例が報告されている点だ。
(2)過剰摂取になりがちな5つの栄養素
これらの栄養素のうち、特に日本の食生活やサプリメントによって過剰摂取になりやすいものがある。そのなかで、今回は特によくしられた5種類を紹介したい。なお、ここでは耐用上限量を一部紹介しているが、年齢や性別で異なるため、各自食事摂取基準を確認してみてほしい。
1)ビタミンA
ビタミンAの耐用上限量は、18~29歳で2,700μgRAE/日とされている。過剰摂取により、頭痛の症状が見られやすく、また奇形・骨折といったリスクも報告されている。成人の場合は、肝臓の検査で肝機能障害が起きているかが、指標の一つとされやすい。
なお、にんじん等に多く含まれるカロテン(ビタミンAの前駆体)に関しては、過剰症は知られていない。サプリメントでの過剰摂取以外では、うなぎ、レバーの食べ過ぎで起こることが報告されている。
・うなぎ100gあたりのビタミンA 1,500μgRAE
・レバー60gあたりのビタミンA 7,800μgRAE
2)ビタミンD
成人の耐用上限量は100μg/日とされる。過剰摂取による症状としては、高カリウム血症、腎障害、軟組織の石灰化等が報告されている。血中のカルシウム濃度が検査指標となっており、特に高カルシウム血症が見られないか検査される。
血中のビタミンD濃度が上昇したとしても、健康被害に直結しないケースも多い。また、紫外線による皮膚からのビタミンD合成は、必要量以上は合成されないと考えられている。
・鮭100gあたり22μg
・鮭しいたけ100gあたり2μg
3)カルシウム
17歳未満まで耐用上限量は設定されておらず、18歳以上では2,500mg/日とされている。過剰摂取により、高カルシウム血症、高カルシウム尿症、軟組織の石灰化、泌尿器系の結石、前立腺がん、鉄・亜鉛の吸収障害、便秘などが確認されている。カルシウムアルカリ症候群の症例報告が、一つの指標となる。
カルシウムはサプリメントによる単体摂取で、心血管系のリスクが上昇すると報告されている。日本では幼少期より牛乳を多く飲む習慣がある。牛乳による過剰摂取のリスクは決して高くないものの、他の微量栄養素との摂取バランスが乱れないように注意が必要だ。
・牛乳200mlあたり 91mg
・いわし60gあたり 14mg
4)マグネシウム
マグネシウムは日本人で欠乏リスクが高い栄養素の一つでもあるが、サプリメントによる過剰摂取にも注意が必要だ。実際に、マグネシウムはサプリメント等による摂取の場合のみ、成人350mg/日という耐用上限量が設定されている。過剰摂取で下痢の症状が見られ、実際に下痢の発症が指標の一つとされやすい。現状食事による過剰症は確認されていないため、なるべく食材による摂取を心掛けるといいだろう。
・あさり100gあたり 100mg
・発芽玄米100gあたり 53mg
5)鉄
鉄もまた、日本人には欠乏リスクの高い栄養素であると同時に、過剰摂取の心配もある栄養素だ。18歳以上の耐用上限量は40mg/日とされ、過剰摂取で胃の不快感、鉄沈着症等が報告されている。鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)の有無は、血液検査を行うことが多く、CT・MRI検査で臓器に鉄が溜まっているかを画像で確認することも可能だ。
鉄もまた、マグネシウムと同様に食事のみで過剰症が起きるケースは非常に稀と言えるだろう。
・豚レバー60gあたり 7.8mg/日
(3)食事をベースに考える
ビタミン、ミネラルの過剰摂取リスクを見てみると、食事による栄養摂取のリスクは、サプリメントに頼るよりもかなり小さいと言えるだろう。食事指導や生活習慣の見直しも、あくまで食事をベースに考えたほうが大きなトラブルは少ない。
とはいえ、ボディメイクやダイエットの初期段階では、往々にして「ビタミン、ミネラルの摂取不足」への対応から始まることが多い。まずは栄養不足の解消を目標に食生活の改善を行い、そのうえで「普段の食事、サプリメント摂取で栄養素の過剰な摂取が見られないか」をチェックするようにしたい。
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