2022.07.16ブログ
第89回 キャノーラ油の安全性。健康にいいの?悪いの?
健康、ダイエット、美容のために「いい油」を摂ろうという話は、一度は聞いたことのある話だと思います。TVやネットでも、「いい油」というキーワードはかなり市民権を得ました。
そんな「いい油」の対極に位置していて、なるべく使うのを避けようと言われる油が「キャノーラ油」です。広く知られている知識ではありますが、キャノーラ油の安全性に関するお話をしつつ、改めて「いい油とはなにか」というお話をしていきたいと思います。
脂肪組成を理解しよう
キャノーラ油のお話をする前に、「脂肪酸」について復習しておきましょう。脂肪酸とは、炭素、水素、酸素の3種類の原子で構成されています。大きな特徴は、脂肪酸の一端には「-COOH」という「カルボキシル基」がついているという点です。酸性を示す有機化合物の多くに、このカルボキシル基がくっついています。
そして、脂肪酸は主に炭素の不飽和結合をしている「不飽和脂肪酸」と、不飽和結合のない「飽和脂肪酸」に分けられます。不飽和結合というのは、隣接する原子が画像のように2価以上で結合している状態を指します。この場合は、炭素同士が2価以上で結合しているという感じです(ここを話し始めると途端にややこしくなるので、そういうものだと覚えておいてください笑)。
一般的に、飽和脂肪酸は常温で固体の状態であり、動物性の油に多いとされています。一方不飽和脂肪酸は、常温で液体の状態であり、植物性の油に多いというのが特徴です。不飽和脂肪酸は、炭素同士の不飽和結合の数で「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」に分類されます。多価不飽和脂肪酸に貼オメガ3とオメガ6、一価不飽和脂肪酸にはオメガ9が挙げられます。
サプリと違い、食品に含まれる成分というのは非常に多種多様です。ひとつの食材に一種類の脂肪酸しかない、ということは基本的にありえません。上で紹介した飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸が、食材ごとにさまざまな割合で含まれています。油に対しても、これは同じことがいえます。
その油に対して、飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸のどの種類が、どんな割合で含まれているかを示すのが「脂肪酸組成」です。Aという食材には、飽和脂肪酸が3割、不飽和脂肪酸が7割含まれているという感じです(実際には、飽和脂肪酸の○○が何%含まれているなど、細かく分類されます)
今回テーマに挙げたキャノーラ油の場合、100gあたりの脂肪酸組成(脂肪の含有量は94.5g)は次のようになっています(Wikipediaより。商品によってこの組成は異なります)
飽和脂肪酸 6.61 g
一価不飽和脂肪酸 62.6 g
多価不飽和脂肪酸 25.25g
それに対して、健康にいい油の代表格であるオリーブオイルの100gあたりの脂肪酸組成(脂肪の含有量は100g)は次の通りです。
飽和脂肪酸 13.808g
一価不飽和脂肪酸 72.961g
多価不飽和脂肪酸 10.523g
こうしてみると、お互いの含有量には大きな差があることが分かりますね。
そもそもキャノーラ油とは何か?
さて、ではいよいよキャノーラ油の話に移していきましょう。食用及び食品加工用に使われる代表的な油として、菜種油があります。キャノーラ油は、菜種油の原料であるセイヨウアブラナのうち、「エルカ酸」と「グルコシノレート」を含まないキャノーラ品種から採油された製品です。日本の場合、食用向けの国産菜種油はエルカ酸を含まない品種から精製されているので、菜種油とキャノーラ油をあまり区別せずに読んでいます。
エルカ酸とグルコシノレート
キャノーラ品種に含まれないエルカ酸とグルコシノレートについて、ちょっとだけ補足させてください。エルカ酸は、一価不飽和脂肪酸のなかの、オメガ9に属する脂肪酸です。アメリカでは、このエルカ酸は過剰摂取により、心臓障害を引き起こすおそれがあるとされています。そのため、アメリカではキャノーラ油が流通するまで、エルカ酸を含む菜種油の食用での販売が禁止されていました。
グルコシノレートは、カラシナやキャベツ、ワサビなどの辛味をもつアブラナ目の多くに含まれる二次代謝産物の一種です。菜種の油かすに含まれていると言われるグルコシノレートは、イソチオシアネートの前駆体となり、甲状腺障害の原因になると言われてきました。
キャノーラ油の安全性に関するさまざまな考察
菜種油から、健康に害する危険性のある成分を取り除いたのがキャノーラ油。とするならば、キャノーラ油を使っても問題ないんじゃない?むしろ健康にはいいんじゃない?という意見も聞かれます。実際、キャノーラ油は加熱調理時の酸化ストレスが低く、調理に向いている油だと言われることも多いです。
そんなキャノーラ油については、さまざまな意見から「健康に悪影響」「健康に悪影響ではない」という話があります。いくつか紹介していきましょう。
健康に悪影響①そもそも食用ではない
キャノーラ油の由来である菜種油は、もともとランプ、ヘアオイルに使用されはじめたのが起源です。そのため「そもそも食用目的の油ではない」という意見があります。
健康に悪影響②脳や各種臓器へのダメージが大きい
動物実験の段階ですが、キャノーラ油は脳にダメージを与えるのでは?という研究があります。マウスにキャノーラ油を摂取したグループとそうでないグループを比較すると、生後1年を経過した時点で、キャノーラ油を摂取したマウスには短期記憶・作業記憶をはじめとした学習能力が低下していたそうです。認知症の症状が誘発されたという報告もあります。
また、大豆脂や魚油を摂取したラットとキャノーラ油を摂取したラットでは、後者のほうが脳卒中リスクが高まったという報告もあったそうです。これ以外にも、肝臓障害や巨核球(血小板を産生する細胞)の減少、寿命の短縮といった報告もありました。
健康に悪影響③遺伝子組み換え食品が多い
日本で販売されているキャノーラ油は、その大半が「遺伝子組み換え食品」です。油に限らず、遺伝子組み換え食品については安全性が「グレー」だという意見が多く存在します。アレルギーの原因になったり、原料に含まれる毒素(害虫に強い成分など)が体内に残りやすいor胎児にも残りやすいといった具合です。
今ハッキリと「危険!」とは言えないものの、ちょっと注意が必要だねという意見が一般的と言えるでしょう。これについては、キャノーラ油そのものへの危険性というよりも、「普段買っているものを注意しましょう」という話になりそうですね。
健康に悪影響はない①単体の成分で見ても意味はない?
キャノーラ油には、製造過程で神経毒性のある「ヘキサン」という有機溶剤が使われています。こういった化学薬品が使われているのは怖いですが、ヘキサンは加熱処理で蒸発するので、健康への害はないとされています。
これ以外にも、キャノーラ油には健康面の不安があるトランス脂肪酸やリノール酸が含まれています。しかし、成分単体で見れば危険ですが、他の脂肪酸があるという点もしっかり見ないといけません。それこそ、オリーブオイルにすらトランス脂肪酸は含まれていますからね。
健康に悪影響はない②日本の食文化になじんでいる
近年、日本でも「オリーブオイルへ切り替えよう」という話はたくさん耳にします。ただ、日本人は長らく不飽和脂肪酸の多い食生活を送ってきました。飽和脂肪酸の多いオリーブオイルは、むしろ欧米の食文化になじんだ脂肪酸組成なのです。
健康的な食事として注目される地中海食の定義にも「オリーブオイルがいい」とは書いておらず「一価不飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸の比率が高い」としていますからね。その比率でみると、キャノーラ油も一価不飽和脂肪酸の方が比率としては多いです。
健康に悪影響はない③血糖値が改善された?
キャノーラ油と全粒粉を用いた低GIのパンという食事によって、血糖値が下がりLDLコレステロール値が改善されたという研究があります。
この組み合わせのみで生んだ効果!と断言するのは難しいですが、キャノーラ油が「健康を害する」とは言い切れない研究結果ですね。
さまざまなバランスから油を選ぼう
こんな感じで、ちまたで「悪い油」と言われるキャノーラ油も、その実態を見ると必ずしも「健康によくない」と言い切れない面があります。もちろん健康を害する報告もあるので、あとはどちらを選択するか、ということになるでしょう。
幸いなことに、日本では食の選択肢が多いです。現状はキャノーラ油よりも健康にいい報告が多く見られるオリーブオイルを選択するというのが、ベターな行動と言えるでしょう。油についても、単一のものを選ぶのではなく動物性油(魚油や鶏肉など)など、バランスよく選んでみてください。そのひとつとして、キャノーラ油を検討するのもありかもしれませんね。
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