2022.10.01ブログ
第94回 マグネシウムはサプリで補える?経皮吸収の効果はどうなの?を考えてみる
マグネシウムは600種類以上の酵素反応と関与しています。酵素反応の内容はエネルギー代謝、たんぱく質合成など実に多種多様です。生体内のミネラル量を比較しても、鉄が約5g、亜鉛が約2gに対して、マグネシウムは約25と5~10倍の開きがあり、いかに体内においてマグネシウムが重要な存在であるかが分かりますよね。
このnoteでも、何度もマグネシウムの重要性について紹介してきました。成人に推奨されるマグネシウムの推奨量は、310mg~420mg/日の範囲で指定されています。しかし、一部文献では日本人が平均して摂取しているマグネシウム量は、わずか250mg/日にとどまるのです。こうした数字からも、現代日本で「マグネシウム欠乏」に分類される人が、非常に多いと分かります。
マグネシウムをおさらい
まずは、マグネシウムの効果や食品をおさらいしておきましょう。前述の通り、マグネシウムは600種類以上の酵素反応と関与しています。その中でも、特に私たちの健康や生活で重要となるのが次の効果です。
・筋肉の弛緩効果(筋力の回復)
・酵素の代謝
・ホルモンバランスの調整
・有害金属(水銀やアルミニウム)の貯蓄抑制
マグネシウムが多く含まれている食品としては、大豆や全粒粉穀物(玄米など)、海藻類(ワカメなど)が該当します。日々の食生活でこれらを食べていない方は、マグネシウム摂取量が心配ですね。
マグネシウム不足で起こると考えられる健康リスク
実際に、マグネシウム不足が原因で次の疾患が増えているという説もあります。
精神疾患
現代日本人は、大小さまざまな精神疾患の罹患率が高まっているとされます。精神疾患の罹患に関係していると言われているのが、「セロトニンの減少」です。セロトニンは脳内の神経伝達物質のひとつで、ドパミン・ノルアドレナリンを制御し精神を安定させる働きがあります。
セロトニンの約95%は、腸内で生成されています。近年「腸内環境」という言葉を耳にする機会が増えましたよね。腸内環境を整えることは、セロトニン分泌量の改善にも効果的だと言われています。ちなみに、ガンの発生部位に腸内が多いことからも、腸内環境を整えることは非常に重要とされているのです。
そして、セロトニン分泌量を正常に戻すには、腸内環境だけでなくマグネシウムの摂取も重要です。セロトニンの材料として、アミノ酸のトリプトファンがよく知られています。それ以外にも、ビタミンB6、ミマグネシウムが、セロトニン生成に必要だからです。
便秘
腸内環境に関連した話を、もう少し紹介させてください。マグネシウムは昔から、便秘薬としての効果も確認されています。これは、マグネシウムに「便を柔らかくする効果」があると考えられているからです。期待されているためである。便秘に悩まされている方は、マグネシウムの摂取量を増やすことで便通の改善につながるかもしれません。便=老廃物がしっかり排泄されれば、腸内環境はさらによくなるでしょう。
マグネシウムのサプリメント摂取の注意点
マグネシウムが日本人に不足している理由として、日本人の食生活の変化が挙げられたりします。しかし、そもそもマグネシウムは「消化吸収効率が悪い栄養素」としても有名です。厚生労働省によれば、マグネシウムの腸管からの吸収率は、約30~50%と半分以下です。推奨摂取量をしっかり食べている人でさえ、マグネシウムが体内で欠乏している可能性があります。
食事で補えないのであれば、サプリメントを摂ればいいとなるんですが…。実はサプリメント摂取も、万人におすすめできる対策じゃないんですね。その理由は、サプリメントは「高濃度である」かつ「吸収率が高すぎる」からです。
「これ、マグネシウム本来の弱点を補っているいい方法じゃない?」と思うじゃないですか。実際に、高濃度かつ吸収率が高い結果、マグネシウムを過剰摂取したとしても、余剰分は腎臓を介して尿中に排泄されるので、健康上のリスクはそこまで高くありません。とはいえ、サプリメントや医薬品で高用量のマグネシウムを摂取することで、吐き気や腹痛、下痢が起こったという事例もあります。
ただし、ここで強調したいのは「サプリメント摂取は、『万人におすすめできる対策』ではない」ということです。一般的に、サプリメントなど食品以外からの摂取量の上限は、成人で1日あたり350mgとされています。この量を上回らない形で、サプリメントを試してみるといいでしょう。
マグネシウムの経皮吸収が注目される理由
マグネシウムの経皮吸収は、一部のアスリート現場でも実施されることで注目されるようになりました。具体的な経路として、マグネシウムが皮膚からリンパを介して、循環器系に直接吸収され、血液濃度を高めるというものです。
経皮吸収には、いくつかの方法があります。
・マグネシウムオイルを使う
スポーツ現場で使用されることが多い方法です。打撲箇所などに使用し、痛みの軽減などの効果が期待されています。
・エプソムソルトを使う
エプソムソルトは「硫酸マグネシウム」のことです。硫酸と聞くとちょっと驚きますが、欧米では一般的な家庭で愛用されている入浴剤なので安心してください。通常の入浴剤よりも料金は高いですが、欧米では健康維持として利用されています。
具体的な効果としては、肌荒れや感想の防止、深部体温の上昇、そしてマグネシウムの経皮吸収とされていますね。NBA、NFL、MLBなどプロスポーツ選手から、女優、モデルにも愛用されているそうです。
実際に、経皮吸収の効果ってどうなの? という話ですが、一説には「マグネシウムの経皮吸収は、経口投与(食事)よりも約5倍吸収率が高い」「経口投与に比べ、胃や腸管を介さないことで高い吸収効果を発揮する」とされています。一方で、「雑誌・インターネット上では経皮吸収効果がうたわれているが、その効果は詳細に検証されてはいない」という論文も発表されているので、なかなかに微妙なラインです。
入浴剤やスプレーを使って、実際に疲労回復や美容によかったという個々のレビューは存在します。エプソムソルトも、ミネラルを含む入浴剤で温浴効果を高め、血流改善やデトックス効果を狙ってもいます。実際に、エプソムソルトを使用するとそうでない時よりも、発汗効果が高かったというレビューは多いです。
基本的に、マグネシウム摂取は「食事(補助的にサプリメント)」が大前提ですが、こうしたレビューを参考にエプソムソルトを使うというのはありかもしれません。実際に入浴剤を使用してみて、精神面や腸内環境(便通など)に何らかの影響があったかを、試してみてはいかがでしょうか。
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