2022.12.31ブログ
第100回 脳から考える食事とダイエット~太りやすい人の頭の中を科学して改善方法を考える~
ダイエットにおいて、特に肥満で悩む人が痩せたいという場合で、特につらいのは食事の「我慢」です。
「ピザ、ラーメン、ケーキ、シュークリームをめいっぱい食べたい!ビールも飲みたい!でも痩せたいから我慢しなきゃいけない…」
「ダイエットで重要なのは、“食べないこと“じゃなくて“よりヘルシーな食事を選択すること“ということは分かっている。でも、そう割り切れない時がたくさんあって、結果欲求に負けてしまうんだ…」
そうやって、なかなか思うようなダイエットができないという人も多いでしょう。自分あるいは家族、友人で、思い当たる人がいるかもしれません。こうした「肥満の人が感じている食欲や欲求は、どうやって生まれているのか」という疑問について、論文を頼りに脳機能的なアプローチで探ってみたいなと思います。
食欲を刺激するネットワークはどう構築されているのか
2006年に発表された論文は、過去の研究を頼りに、健常者と肥満者には、食欲の発生にどんな差があるのかがまとめられました。
通常、食べ物を見て「食べたい」と思い、実際にそれを摂取しようと決める要因には、食べ物の味、香り、視覚的な要素がかなり影響します。それがとても美味しい食べ物だと分かりつつも、「これを食べたら今日のカロリーがオーバーしてしまう」「ちょっと栄養バランスが悪そう」などの理性が働き、食欲を我慢するというのが、一般的な食生活改善の流れです。
しかし、こうした食べ物から情報によって、満腹信号が上書きされてしまうと、過食が促進されてしまいます。そして、食欲のコントロールに大きく左右するのは、前頭葉の眼窩領域、腹側線条体、扁桃体、中脳などの部位です。これらが、脳内ネットワークにおいて相互に関与し合うことで、食事行動が決定されています。
ヒトの場合、食欲に対する感受性にはかなり個人差があります。感受性が高い人は、頻繁に強烈な食欲を経験し太りやすく、過剰な食物摂取を起こす「摂食障害」を発症しやすいと言われています。
実際に行われた研究では、食欲に対する感受性が高い人は、チョコやピザといった食欲をそそられる食べ物を目にした時、前頭葉–腹側線条体–扁桃体–中脳ネットワークが活性化していたそうです。また、そうした食欲をそそられる食べ物を見るという刺激を繰り返すことで、同じ反応(過食)を起こしやすくなってしまう分かっています。ここのやっかいな点は、実物ではなく食べ物の写真を見るだけでも、反応が繰り返されるという点です
動物実験でも、前頭葉–腹側線条体–扁桃体–中脳ネットワークを薬物などで刺激すると過食が生じて、満腹状態でも高脂質・高炭水化物の食品を優先して食べてしまうことが分かっています。
肥満リスクのある人は食事にどう反応している?
もう1つ、2011年に発表された論文も観てみましょう。肥満の人は、正常体重の人と比較すると、線条体のD2受容体の反応が弱いと言われています。線条体は先ほども登場しましたが、脳の中心部に位置して、意思決定に深く関わると言われている部位です。
D2受容体は「ドーパミン受容体」とも言われ、運動調節や意欲・学習などに関わる神経伝達物質のドーパミンに活性化され、線条体での情報伝達を行います。ここが不足すると、行動の抑制を司る前頭前皮質の活性が低下し、食欲を抑えられない→過食へと至ってしまうのです。ちなみに、D2受容体が過活性の状態だと、統合失調症のリスクが高まってしまいます。
ラットにおける研究においても、肥満のラットは正常体重のラットと比較して、側坐核、背側線条体、内側前頭前野のドーパミンレベル、D2受容体の活動が弱い・低いことが分かっています。これらはいずれも、報酬に対するやる気や、情動的な行動のコントロールに関連する部位です。
また、肥満の人は正常体重の人と比べて、食べ物が得られると予測できる状況で、尾状核や脳の味覚領域、口腔体性感覚領域の反応が大きくなりやすいです。尾状核は、脳の学習と記憶に深く関わっています。つまり、肥満の人は食べ物を見た時、正常体重の人よりも強く食べ物から得られる刺激(おいしさや快感)を感じやすくなっているということですね。
同様に、肥満の人は口当たりのよい食べ物を口にした時、偏桃体などの反応が大きくなるという研究もあります。この論文では、実際に肥満リスクの高い若者と低い若者に対して、食べ物に対してどういう報酬反応を示すか調査しています。肥満リスクの高さは両親のBMIによって識別し、両親のBMIが27以上のグループを「高リスク群」、BMIが25より低いグループを「低リスク群」としました。
参加者は、実験開始前の4~6時間は飲食を控えるように指示され、ミルクセーキを摂取した際に、食事に関連する脳領域がどのように反応するかを調査しました。すると、食事に関する脳領域は、高リスク群の方が強く反応していたそうです。この実験では、高リスク群と低リスク群で「金銭報酬に対して、線条体はどう反応したか」も調査しました。すると、2つのグループで、金銭報酬による反応の差は見られなかったそうです。つまり、脳の報酬反応の変化は、すべての報酬に対して強くなるのではなく、食事に関連する分野だけ強まっていたという結果が出ました。
食事改善の前に「認知行動療法」が必要かも?
ここまでの話をまとめると、次のことが言えると思います。
- 食事の感受性は、主に前頭葉–腹側線条体–扁桃体–中脳ネットワークによって構築されている
- 肥満者は食事への感受性が高く、食べ物の写真を繰り返し見るだけでも、感受性は高くなりやすい
- 肥満者は線条体のD2受容体の反応が弱く、食事に対する抑制が効きづらくなっている
- 肥満者は正常体重の人より、食事において“のみ“過敏な反応を示しているケースが多い
こうした脳領域で考えてみると、食べ過ぎで太ってしまっている人が、食事改善でダイエットを成功させるというのは「とても大変だ」ということです。過食気味で悩んでいる人の難しい点は、栄養や食事の知識がないということよりも、それらの知識がちゃんとあるけれど、どうしても過食気味になってしまうという点です。この状態を放置したまま、厳しい食事制限に挑んでしまった結果、リバウンドによって自己否定感を覚えてしまい、ストレスから摂食障害に陥ってしまうことも考えられます。
こうしたリスクが想定されるのなら、まず実践していきたいのは「認知行動療法」です。認知行動療法は、これまでの自分の行動に対する「認知」に働きかけて、ストレスの軽減や精神疾患の治療を行っていく方法です。実際、過食症に悩む患者に認知行動療法を行った結果、約半数の人が過食症状が消失したという研究もあります。
認知行動療法の実践としては、次のようなものが挙げられます。
- 自分の行動や感情を観察する
- 今の気持ちや考えをノートなどで整理する
- その時の状況を振り返り、事実と自分の考えとを分けて考える(セルフモニタリング)
- 考え方のクセに気づく(自責思考、べき論、白黒思考など)
- いつもと違う行動を取ってみる
- 苦手なこと、問題解決に取り組んでみる など
もちろん、本格的な治療は専門の医療機関で行った方がいいでしょう。そうではなく、「ついつい食べ過ぎてしまう癖を見直したいな」という人や、「食事改善の一環として、認知行動療法の考え方を取り入れたいな」と考える方は、本などで勉強してみるといいかもしれません。
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